Russia Makes Big Moves as Fatalities Mount
aviationweek.com Sep 16, 2011直 近で発生したヤコブレフYak-42事故はロシア航空業界に深刻な影響を及ぼしそうだ。メドベージェフ大統領が航空安全の抜本的改善を求め、西側航空機材 導入が簡単にできるようにする一方、エアライン会社数を大幅に減らし、航空安全の監督制度にもテコ入れを施そうとしている。
- 事 故機は機齢18年の三発旅客機でヤロスラブリ空港を離陸中に墜落し、乗員乗客44名が死亡している。同機はチャーター航空会社Yak-Serviceが運 行しており、地元のホッケーチームをベラルシのミンスクまで運ぶ予定だった。同機は必要な速度と高度を得られないまま滑走路をオーバーランし地面に激突し たもの。
- 同機のデータレコーダーの予備調査では操縦系統、エンジンはともに正常に作動していたが、昇降舵とフラップは離陸の位置に入っていたことが判明。空港の当時の天候状況は離陸を中止するようなものではなかった。
- 運 輸大臣イゴール・レビティンIgor Levitinは「操縦クルーは立派な資格をもっていた。機長は第一級でYak-42操縦1,500時間の経験があり、副操縦士も400時間以上の経験が あった」と発表。離陸前にクルーは飛行制御機能のチェックをしていたと州間航空委員会(IAC)関係者は明らかにしている。事故調査はIAC主導でおこな われ、ボイスレコーダーの解析および機体破片から墜落原因を究明することを目指してい多数
- ロ シアではこのところ墜落事故が多数発生しており、航空安全基準そのものに対する疑問が生じている。アントノフAn-12貨物機事故(8月9日)で死亡11 名、アントノフAn-24でエンジン火災が発生し緊急着陸する事故がトムスクで発生し7名が死亡している。6月20日にはツポレフTu-134が悪天候の 中ペトロザボドスク空港へのアプローチ中に不時着し死亡47名。1月1日のツボレフTu-154B2事故はスルグト空港のタキシー中で3名が死亡してい る。他にヘリコプター、小型機では相当数の事故が発生している。
- 2011年に入って死亡事故は19件発生しており、死亡者は137名だ。大部分が老朽機を運営する中小規模のリージョナルまたはチャーターエアラインで発生している。このためロシア政府は老朽機の退役を進め、国内の運行会社数を減らす方針だ。
- 対 策として提案されているのは衝突防止システムを2012年1月1日から義務化する案だ。ソ連時代の航空機の多くにはまだ装備されておらず、そのための費用 は機体の残存価値を上回る。各地域の大手エアラインではすでにTu-134やAn-24をボンバルディアCRJやATRのターボプロップ機で更新している ものもあるが、弱小会社ではなかなか実施できない。
- そこでロシア政府は一社が運行する機材の最低機数を定めようとしている。同一機種を5機う運行するエアラインは定期運航を3路線できる。これ以上の路線を運行するためには10機が必要だ。一方、機材が合計で20機未満の会社は2013年1月1日までに解散となる。
- これに対し航空業界では政府の2つの方針に批判がある。エアラインの規模と事故に関連があるのか、機材の機齢と安全基準にも関連があるのかという指摘だ。小規模エアラインのトップからは新政策では地域内航空事業が壊滅するとの訴えが出ている。
- メドベージェフ大統領からは政府に対し提案原案を作成し、「航空安全を確保できない運航業者の運航を停止させろ」との指示が出ている。立法化も準備中で国際基準でパイロット訓練を行い、国家主導で航空安全水準の改善ならびに安全監視システムの導入を求めている。
- そ の一部として緊急措置として現在の安全基準を満たす機材であれば原産国を問わず民間商用機をエアライン各社がリースできるようにする。「人命尊重が何より も大事で、国産品優先採用よりも高いということであり....国内メーカーは大事だが、安全基準を満たせないのであれば海外から調達すべきだ」とメドベー ジェフ大統領は談話発表している。リース支援策は2012年2月までに実施される。また、地域内のコミューター航空会社に補助金を交付すると大統領は発表 した。
- た だしこれには疑問が多分にある。ロシアの民間エアライン会社数は144あり、そのうち15社が旅客数の85%を運んでいる。大手5社は、アエロフロート、 トランスエアロTransaero、UTエア UTair、S7、ロッシャRossyaのシェアは合計57%になるが、このうちUTエアだけが長距離路 線、中距離線、リージョナル線の全部を運行している。新規則では小規模エアラインは生き残れず、または追加投資が相当必要になり、地元エアラインや空港へ 国庫から資金投入する必要が生じる。機材の更新を加速するにも大規模なし金が必要で、業界では総額30億ドルと予測する。海外機材を導入すればパイロット の再訓練が必要だが、現状でもパイロット不足が続いている。
- ロ シアの航空機メーカーは長年にわたり西側からの競争から保護されてきたが、それでも今回の進展にはショックを隠し切れない。近年は航空機輸入関税が部分的 に縮小されてきているが、大型リージョナル機と中距離旅客機は自由化されていない。このふたつでスホーイ・スーパージェット100とイルクートMS-21 が開発中だ。海外からの輸入を国をあげておこなうのであれば、国内メーカーの生き残りでも新政策が必要になろう。
- ただし2012年度のロシア国家財政には航空運輸行政でこれらの大規模支出は想定されておらず、12月の議会選挙と来年春の大統領選挙でロシア航空業界は一層不確実な状況に直面すると予想される。
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