スキップしてメイン コンテンツに移動

ユナイテッド777-200で発生したエンジン重大事故の調査結果第一報。プラットの製造時点検に不手際があった可能性浮上。

 

NTSB: Fan Blades Fractured In UAL 777 Engine Incident

Guy Norris Sean Broderick February 21, 2021

https://aviationweek.com/mro/safety-ops-regulation/ntsb-fan-blades-fractured-ual-777-engine-incident

 

United Airlines Flight 328右エンジンから発煙しているユナイテッドエアラインズ328便。デンバー国際空港を離陸した直後。2021年2月20日。Credit: Hayden Smith

 

運輸安全委員会(NTSB)は2月20日発生したユナイテッドエアラインズのボーイング777-200で発生したエンジン重大事故の調査でファンブレード二枚の破損を発見したと2月21日発表した。同機はデンバー国際空港離陸直後に事故に遭遇し、直後に同空港へ引き返した。

一方でFAAはファンブレードの緊急点検命令を作成中で、ボーイングは新たな措置が定まるまで同型機を保有する各社には運航停止を求めている。

FAA長官スティーブ・ディクソンは2月21日、プラット&ホイットニーPW4000エンジンでファンブレードの「即時重点検」を指示すると述べた。

「事故直後の情報から点検間隔を縮め同型エンジンで発生したファンブレードの中空現象の検知を進める」

ボーイングからはPW4000搭載の777各機は米規制当局の次の措置が出るまで運行を停止してほしいとの発表があった。

「運輸安全委員会による調査が進行する間、当社はプラット&ホイットニー4000-112型エンジン搭載の777、運行中69機保管中59機はFAAによる適正な点検手順が定まるまでは運航停止を推奨する」との声明文を同社は2月21日に発表した。

ユナイテッドは同声明文が出る前に同社保有24機の運航を停止した。日本の規制当局も国内運行会社に同型機の運航停止を指示した。

NTSBは2月21日にブレード2枚に損傷を見つけた。一枚は「根本近く」で破断しており、「隣接するブレードもほぼ中央部で破断していた」。

調査ではブレードの一枚がエンジンの格納リングに突き刺ささり、「その他のブレードも先端部分から損傷が見つかった」とNTSBは述べている。機体の損傷は「軽微」だった。

今回のインシデントは1994年製造の777-200で発生し、同機はホノルルへ向かい上昇の初期段階だった。プラット&ホイットニーPW4077の第2二エンジンから部品が飛散し、デンヴァー郊外のブルームフィールドに落下した。撮影された映像を見ると、ファンブレード以外にインレット・カウルリップやナセルの外装が破損しているようだ。

同機はユナイテッド328便として乗客231名、乗務員10名が搭乗していたが、無事着陸できた。機内、地上で負傷者はない。

今回の事案はインレットあるいはカウリング部品が脱落する点で以前のPW4077のファンブレード関連事故と驚くほど類似している。2018年2月13日にはやはり777-200で第2エンジンが着陸30分前に故障した。NTSBはプラットの社内検査手順の不備が事故につながったとの結論を出した。

直近では2020年12月4日に日本航空の777-200で第一エンジンがファンブレード一枚を那覇空港を離陸直後に喪失している。

2018年のインシデント後にFAAはPW4000のファンブレードの緊急点検並びに継続点検を命じた。今回のユナイテッド328便のエンジンで点検が適正に行われていたかは現時点では不明だ。■


コメント

このブログの人気の投稿

2024年11月5日、アリゾナ州、ホンダジェット、機内4名+地上巻き添え1名死亡―ホンダジェットで初の人身事故となった同機は離陸中止後に滑走路で止まりきれず、地上車両と激突した

Date: Tuesday 5 November 2024 Time: c. 16:39 LT Type:      Honda HA-420 HondaJet Owner/operator: Ice Man Holdings LLC Registration: N57HP MSN: 42000033 Engine model: GE Honda HF120 Fatalities: Fatalities: 4 / Occupants: 5 Other fatalities: 1 Aircraft damage: Destroyed Category: Accident Location: Falcon Field Airport (MSC/KFFZ), Mesa, AZ -   United States of America Phase: Take off Nature: Private Departure airport: Mesa-Falcon Field, AZ (MSC/KFFZ) Destination airport: Provo Airport, UT (PVU/KPVU) Investigating agency:  NTSB Confidence Rating: Information is only available from news, social media or unofficial sources Narrative: A Honda HA-420 HondaJet, N57HP, was destroyed when it crashed during a takeoff attempt from runway 22L at Falcon Field Airport (MSC'KFFZ), Mesa, Arizona. Four occupants of the aircraft, including the pilot, and the vehicle driver perished. ADS-B data suggests the airplane had accelerated to about 133 knots groundspeed before it ab...

2024年5月20日 ボーイング777-300ER 1名死亡 乱気流突入事故の予備調査報告から浮かび上がった高度、Gの変化について(T1記事と共通です)

  New York Times シンガポール航空機を襲った乱気流: SQ321便に何が起こったのか? 乱気流の中でSQ321便に何が起こったのか、新たな詳細情報が明らかになった。この事故では乗客1名が死亡、数十名が負傷している。 5 月20日、シンガポール航空SQ321便は現地時間午後10時15分、乗客211人と乗員18人を乗せてロンドンのヒースロー空港を離陸した。  同便はミャンマー南部のイラワジ流域に到達するまで事故はなかったが、午後3時49分21秒(シンガポール時間)、高度37,000フィートで飛行中、機体が振動し始めた。おそらく対流活動(雷雨に伴う上昇気流と下降気流)に入った後と思われる。  同時に、機体は急上昇を始めた。  これに対し、オートパイロットは機体を下降させ、高度37,000フィートに戻した。  午後3時49分32秒、パイロットの一人がシートベルト着用サインが点灯した。  それから10秒も経たないうちに機体は急激な高度低下に見舞われ、ベルトをしていなかった乗客と乗員が空中に放り出された。  調査によると、4秒以内に飛行機の垂直加速度は1.5Gに戻り、座席から投げ出された乗客は落下し、乗客・乗員に負傷が発生した。 この間21秒間、パイロットは機体を安定させるため手動操縦を行った。午後3時50分5秒に自動操縦を再開した。  午後3時50分23秒に本来の巡航高度である37,000フィートに達するまで、飛行機は緩やかではあったが変動を続けた。  客室乗務員から乗客の負傷について報告を受けたパイロットは、バンコクにあるスワンナプーム空港にダイバートした。その途中、パイロットからは到着時に医療サービスを要請した。  乱気流発生から約17分後の午後4時45分12秒、同機はスワンナプーム空港に着陸した。  シンガポール運輸安全調査局が発表した予備調査結果では、ボーイング777-300型機に影響を与えた乱気流の3分間のに何が起こったのかを説明する技術的な詳細が明らかになった。  このデータは、航空機のトランスポンダーからの情報を受信する受信機、衛星、レーダーのグローバルネットワークから得られた。  このデータによると、航空機は午後3時49分から午後3時51分までの62秒間に2回、急上昇と急降下を繰り返している。  フライトの高度は1分足らずの間に362フ...

AF447便事故 失速を認識していなかった可能性

AF447 Pilots Never Formally Identified Stall aviationweek.com Jul 29, 2011 フランス事故捜査当局BEAは2年前に発生したAF447便事故の背景にパイロット訓練の欠陥があることを発見した。 今回明らかになったひとつが「高高度で速度表示が信頼できない表示になっている際の手順および手動操縦の訓練を同機副操縦士が受けていない」こと。 AF447事故機の正操縦士は墜落に至る一連の状況が発生した時点で休息していた。同機はリオデジャネイロを出発し、パリに向かっていた。2009年6月1日の事故で搭乗乗客乗員238名が死亡している。 ま た報告書では事故発生時点で正副操縦士がどのように同機を操縦していたで複数の疑問を呈している。「ピッチ姿勢と昇降速度のちがいを読み合わせる標準手順 が守られていなかった」とし、さらに「操縦士のどちらも失速警報に注意を払っていなかった」上に「操縦士全員に失速の認識がなかった」としている。 . この間の最初の90秒で機長は操縦席の外で休息していたが、飛行担当外パイロット(PNF)の呼び出しを受けて戻っている。その時点で操縦を担当していた操縦士は三名のパイロットの中で経験が一番浅かった。 今回の中間報告でBEAは安全確保の10項目を提言している。各国規制当局は訓練課程、点検項目を見直して、「手動操縦技術を目標にした訓練を定期的に行う」べきとしている。この訓練には高高度における失速状況からの回復を含むべきとしている。 . あわせてBEAは各国当局に副操縦士二名搭乗時での機長の役割を明確に定義するべしと提言している。また操縦席において迎え角表示を操縦士が参照できるようにするべきともしている。 BEAは操縦席内にカメラを設置し、計器盤全部を記録する案を提唱している。その画像記録は厳格に定義された規則のもとで活用するべきともしている。 画像データはエアラインの運行管理センターに送付され、緊急時に該当機を特定することができるようになる。BEAは各国当局は緊急時無線発信機(ELT)の設置を義務付けることを検討すべきとも提言している。 最 終...