スキップしてメイン コンテンツに移動

MH370事故 重い腰を上げてマレーシア政府が報告書第一報を公表

マレーシア政府が国内の圧力に負けて事故報告書第一報を公表しましたが、逆に国際ルールに反している同国の情報公開の仕組みが明らかになってしまいました。MH370便ではまだ調査が続いていますが、マレーシアの政治の仕組みそのものが国際的な常識の線に変化していく第一歩になりそうですね。犠牲者の皆さんには申し訳ないのですが。



First MH370 Report Details Confusion In Hours After Flight Was Lost

aviationweek.com May 1, 2014Sean Broderick | AWIN First
MAS777

マレーシア運輸省がマレーシア航空370便事件の暫定報告書を本日公表し、失踪の原因では何ら目新しい発表はないものの、航空機の所在をリアルタイムで把握する手段の確立を提言している。
  1. 報告書ではMH370へ連絡を取ろうとした経緯を航空管制通話記録、同便の乗客座席表、搭載貨物のマニフェストを引用し9ページに渡り説明している。クアラルンプール国際空港の管制官とマレーシア航空のオペレーションセンターが4時間近くに渡り同機と連絡をとろうとしていたものの、緊急事態であることを示す兆候を軽視していたことがわかる。
  2. 同報告書は4月9日付けだが、公表は本日になった。北京行きMH370のクアラルンプール国際空港出発は現地時間3月8日00:41:43 と確認している。
  3. その後01:19:24にMH370の管制はホーチミンに移り、MH370操縦席の一人が確認返答している。同機からの最後のレーダー信号は01:21:13だったが同機からホーチミン管制官へ確認は発信されていない。これが同機の存在を示す最後の時点となった。01:38にベトナム管制官からクアラルンプールにMH370の所在を照会している。
  4. 30分近く立ってから同機の所在をつきとめようとクアラルンプール管制官がマレーシア航空オペレーションセンターに連絡したのが02:15で、同センターからはカンボジア上空で同機と連絡ができているとの回答があった。しかしカンボジア管制部からは同便とのコンタクトはなく、何ら情報ないとの回答があった。ホーチミン管制部も同便のフライトプランにはカンボジアは入っていないと確認している。
  5. オペレーションセンターから同便が「正常飛行中」と回答したのは02:35で、その後一時間たって同センターからフライト追跡は「フライトプランの予測に基づくもので、同機の実際の位置を確実に示すものではない」と回答してきたと報告書で明らかになった。
  6. その後の数時間に渡り管制部とセンターはMH370に連絡を入れようとする中で、飛行中の別のマレーシア航空便も援助を申し出てきた。4時間に渡り徒労を続けた後に、緊急事態扱いにしたのが05:30だった。
  7. 報告書では航空機通信連絡報告システム (ACARS) が合計7回にわたり「ハンドシェイク」自動通信を送っており、最後は08:19としているが、それ以上の詳細は触れていない。また信号発信により調査陣が同機はインド洋南方が最後の飛行地点と結論付けることになったと分析しているが、同機の飛行経路では何ら新しい分析はしておらず、すでに判明している同機がマレーシア付近で飛行高度を変更していることにも言及はない。
  8. マレーシア国防相(運輸大臣代行)ヒシャムディン・フセインからはマレーシア軍レーダーが同機を捕捉しており、同機が「西側に方向転換しマレーシア半島を横断しているのを3月8日に観測していた」ことを確認するものの、即座に行動をとらなかったのは「同便が敵機でないと判別されていた」ためだとする。軍レーダーの記録テープにより緊急事態宣言直後の捜索活動はマラッカ海峡に集中した、とも同大臣は説明。
  9. 報告書は国際民間航空運輸機関 (ICAO) に対し「リアルタイム式機体追跡装置の標準化による安全性向上の効果を検討する」よう提言している。ICAOはすでにこの課題に取り組んでおり、5月12日から13日にかけてフライトデータ追跡サミットを開催する。
  10. 報告書公表はマレーシア民間航空局がICAOへ報告書を提出したものの一般に公表していないことへの不満が高まったことへの対応だ。公表して二日後にナジブ・ナザク首相がCNNで報告書は内部検証後に公表するつもりだったと語っているが、マレーシア政府は情報公開の国際規範から外れていることが明らかになった。
  11. ICAOの航空事故調査規範として附則13号で報告書速報を調査対象の事故あるいはインシデント発生から「30日以内に」完成させることを求めている。また報告書は該当航空機の運航、設計製造、あるいは「関連情報、機材、施設を提供したすべての国」に該当する国すべてに配布することになっている。なお米国のNTSB国家運輸安全委員会は公表前にマレーシアから報告書写しを受領していると認めている。
  12. ただし附則13号では報告書等の一般公開には触れていなが、報告書速報が秘密にされることは稀である。フランス事項調査機関BEAは2009年にエールフランス447便事故の報告書速報を事故発生から31日目に公表している。台湾の航空安全委員会はシンガポール航空006便の蒋介石国際空港事故で報告提言を一ヶ月以内に発表している。■


コメント

このブログの人気の投稿

2024年11月5日、アリゾナ州、ホンダジェット、機内4名+地上巻き添え1名死亡―ホンダジェットで初の人身事故となった同機は離陸中止後に滑走路で止まりきれず、地上車両と激突した

Date: Tuesday 5 November 2024 Time: c. 16:39 LT Type:      Honda HA-420 HondaJet Owner/operator: Ice Man Holdings LLC Registration: N57HP MSN: 42000033 Engine model: GE Honda HF120 Fatalities: Fatalities: 4 / Occupants: 5 Other fatalities: 1 Aircraft damage: Destroyed Category: Accident Location: Falcon Field Airport (MSC/KFFZ), Mesa, AZ -   United States of America Phase: Take off Nature: Private Departure airport: Mesa-Falcon Field, AZ (MSC/KFFZ) Destination airport: Provo Airport, UT (PVU/KPVU) Investigating agency:  NTSB Confidence Rating: Information is only available from news, social media or unofficial sources Narrative: A Honda HA-420 HondaJet, N57HP, was destroyed when it crashed during a takeoff attempt from runway 22L at Falcon Field Airport (MSC'KFFZ), Mesa, Arizona. Four occupants of the aircraft, including the pilot, and the vehicle driver perished. ADS-B data suggests the airplane had accelerated to about 133 knots groundspeed before it ab...

2024年5月20日 ボーイング777-300ER 1名死亡 乱気流突入事故の予備調査報告から浮かび上がった高度、Gの変化について(T1記事と共通です)

  New York Times シンガポール航空機を襲った乱気流: SQ321便に何が起こったのか? 乱気流の中でSQ321便に何が起こったのか、新たな詳細情報が明らかになった。この事故では乗客1名が死亡、数十名が負傷している。 5 月20日、シンガポール航空SQ321便は現地時間午後10時15分、乗客211人と乗員18人を乗せてロンドンのヒースロー空港を離陸した。  同便はミャンマー南部のイラワジ流域に到達するまで事故はなかったが、午後3時49分21秒(シンガポール時間)、高度37,000フィートで飛行中、機体が振動し始めた。おそらく対流活動(雷雨に伴う上昇気流と下降気流)に入った後と思われる。  同時に、機体は急上昇を始めた。  これに対し、オートパイロットは機体を下降させ、高度37,000フィートに戻した。  午後3時49分32秒、パイロットの一人がシートベルト着用サインが点灯した。  それから10秒も経たないうちに機体は急激な高度低下に見舞われ、ベルトをしていなかった乗客と乗員が空中に放り出された。  調査によると、4秒以内に飛行機の垂直加速度は1.5Gに戻り、座席から投げ出された乗客は落下し、乗客・乗員に負傷が発生した。 この間21秒間、パイロットは機体を安定させるため手動操縦を行った。午後3時50分5秒に自動操縦を再開した。  午後3時50分23秒に本来の巡航高度である37,000フィートに達するまで、飛行機は緩やかではあったが変動を続けた。  客室乗務員から乗客の負傷について報告を受けたパイロットは、バンコクにあるスワンナプーム空港にダイバートした。その途中、パイロットからは到着時に医療サービスを要請した。  乱気流発生から約17分後の午後4時45分12秒、同機はスワンナプーム空港に着陸した。  シンガポール運輸安全調査局が発表した予備調査結果では、ボーイング777-300型機に影響を与えた乱気流の3分間のに何が起こったのかを説明する技術的な詳細が明らかになった。  このデータは、航空機のトランスポンダーからの情報を受信する受信機、衛星、レーダーのグローバルネットワークから得られた。  このデータによると、航空機は午後3時49分から午後3時51分までの62秒間に2回、急上昇と急降下を繰り返している。  フライトの高度は1分足らずの間に362フ...

AF447便事故 失速を認識していなかった可能性

AF447 Pilots Never Formally Identified Stall aviationweek.com Jul 29, 2011 フランス事故捜査当局BEAは2年前に発生したAF447便事故の背景にパイロット訓練の欠陥があることを発見した。 今回明らかになったひとつが「高高度で速度表示が信頼できない表示になっている際の手順および手動操縦の訓練を同機副操縦士が受けていない」こと。 AF447事故機の正操縦士は墜落に至る一連の状況が発生した時点で休息していた。同機はリオデジャネイロを出発し、パリに向かっていた。2009年6月1日の事故で搭乗乗客乗員238名が死亡している。 ま た報告書では事故発生時点で正副操縦士がどのように同機を操縦していたで複数の疑問を呈している。「ピッチ姿勢と昇降速度のちがいを読み合わせる標準手順 が守られていなかった」とし、さらに「操縦士のどちらも失速警報に注意を払っていなかった」上に「操縦士全員に失速の認識がなかった」としている。 . この間の最初の90秒で機長は操縦席の外で休息していたが、飛行担当外パイロット(PNF)の呼び出しを受けて戻っている。その時点で操縦を担当していた操縦士は三名のパイロットの中で経験が一番浅かった。 今回の中間報告でBEAは安全確保の10項目を提言している。各国規制当局は訓練課程、点検項目を見直して、「手動操縦技術を目標にした訓練を定期的に行う」べきとしている。この訓練には高高度における失速状況からの回復を含むべきとしている。 . あわせてBEAは各国当局に副操縦士二名搭乗時での機長の役割を明確に定義するべしと提言している。また操縦席において迎え角表示を操縦士が参照できるようにするべきともしている。 BEAは操縦席内にカメラを設置し、計器盤全部を記録する案を提唱している。その画像記録は厳格に定義された規則のもとで活用するべきともしている。 画像データはエアラインの運行管理センターに送付され、緊急時に該当機を特定することができるようになる。BEAは各国当局は緊急時無線発信機(ELT)の設置を義務付けることを検討すべきとも提言している。 最 終...