スキップしてメイン コンテンツに移動

NTSBによるアシアナ777機事故調査報告の内容

記事より (ターミナル1同時掲載)

NTSB Calls For Special Review Of Boeing 777 Speed Control

aviationweek.com Jun 24, 2014John Croft
NTSB

NTSBはFAAに対しボーイング777の型式証明過程の検証を行い、飛行自動制御装置の飛行速度制御を調査すべきと提言している。
  1. 特別検証作業をFAAが実施するのは異例で、NTSBが採択した提言27項目の一つに盛り込まれたのはアシアナエアラインズ214便サンフランシスコ事故(2013年7月6日)に関する報告の一部である。NTSBの提言中15点がFAA宛になっており、アシアナには4点、ボーイングへは2点となっている他、6点がサンフランシスコ空港向けのもの。
  2. 同事故で乗客3名が死亡、187名が負傷している。事故を起こした777-200ERは28L滑走路着陸前に護岸堤に激突しているが、目視手動操縦でアプローチしており、エンジンがアイドル状態にされ、飛行速度が低くなりすぎていた。
  3. 考えられる原因としてNTSBパイロットの過失をまずとりあげ、「降下で失敗」したうえ、状況判断を誤りゴーアラウンドの決定が遅れ、機体が「グライドパスの下にあり、飛行速度の限界を下回っていた」ことはアプローチ初期に理解していたとする。
  4. 同時に原因と考えられるものに飛行担当機長が自動飛行速度制御装置を「意図せずに解除」した点があるとする。これが自動飛行制御装置の飛行高度変化Flight Level Change (FLCH)モードの作動状況を機長が誤解する混乱につながったとする。この混乱ぶりが事故要因の最上位にされており、事故調査官は「自動スロットルおよびオートパイロット飛行指示装置の複雑な関係がボーイングの文書で適切に記載されておらず、アシアナ社内の訓練でも正しく取り扱われていなかった」ことでパイロットエラーの可能性が高まったとしている。
  5. 777の自動スロットルは通常は危険なまで飛行速度が落ちると自動的に出力を上げる設計だが、FLCHモードには「保持」モードもあるが自動的に始動できない設計だ。操縦中のパイロットはアプローチ中に保持モードにするのが遅れ、同僚パイロットに口頭で変更を伝えていなかった。飛行速度は予定を下回ったまま、操縦パイロットは適切な出力を得られずグライドパスの下を飛行し、ゴーアラウンドの開始も遅れてしまった。
  6. その他の要因としてパイロット両名が自動スロットルとオートパイロット取り扱いで「規定外の」口頭連絡と調整をしていた点、操縦担当パイロットが有視界アプローチで受けた「訓練が不適切」だったこと、教官パイロットの監督が不適切だったこと、乗員がソウルから夜行便で疲労が溜まっていたこと、を上げている。左席の操縦パイロットは777機長資格取得を修了する寸前で、以前はエアバスA320機長を5年間務めていた。一方、教官パイロット(右席)は777教官資格取得後これが初のフライトだった。
  7. NTSBが求めている特別型式証明検証(SCR)はこれまで「6回ないし7回」行われており、過去にはロビンソンR44ヘリコプター、ATR72、三菱MU-2などの機種が対象だった。
  8. SCRに関する提言は調査委員会でも意見が分かれ原案どおりの採択を2名が求め、別の2名は反対を意思表示しており、賛否同数のため原案がさタイクされたが、最終報告書では反対意見の記載が可能だ。
  9. ボーイングはNTSBが777の自動飛行制御装置が事故原因としたことに反論しており、「調査結果に同意できず、証拠もある」と同社は文書で声明を発表。「777の安全記録は群を抜く水準のもの」とし、自動飛行制御は各種機種で累計2億時間相当も使われており、55百万回の着陸が安全に実施されているとしている。■

コメント

このブログの人気の投稿

2024年11月5日、アリゾナ州、ホンダジェット、機内4名+地上巻き添え1名死亡―ホンダジェットで初の人身事故となった同機は離陸中止後に滑走路で止まりきれず、地上車両と激突した

Date: Tuesday 5 November 2024 Time: c. 16:39 LT Type:      Honda HA-420 HondaJet Owner/operator: Ice Man Holdings LLC Registration: N57HP MSN: 42000033 Engine model: GE Honda HF120 Fatalities: Fatalities: 4 / Occupants: 5 Other fatalities: 1 Aircraft damage: Destroyed Category: Accident Location: Falcon Field Airport (MSC/KFFZ), Mesa, AZ -   United States of America Phase: Take off Nature: Private Departure airport: Mesa-Falcon Field, AZ (MSC/KFFZ) Destination airport: Provo Airport, UT (PVU/KPVU) Investigating agency:  NTSB Confidence Rating: Information is only available from news, social media or unofficial sources Narrative: A Honda HA-420 HondaJet, N57HP, was destroyed when it crashed during a takeoff attempt from runway 22L at Falcon Field Airport (MSC'KFFZ), Mesa, Arizona. Four occupants of the aircraft, including the pilot, and the vehicle driver perished. ADS-B data suggests the airplane had accelerated to about 133 knots groundspeed before it ab...

お知らせ―新ブログの追加について

いつも当方のブログをご愛読いただきありがとうございます 昨年からの大きな流れが今年は形になり、私達の世界が大きく変わろうとしています。 より端的に言って、コモンセンスの勝利が続いています。 米国ではトランプを支援すると口にできなかった層が世論調査ではハリス支援、もちろん と答えたため世論調査は無効になってしまいました。 米国内が無茶苦茶になった理由としてこれまで民主党が支配してきたDEI思想など「目覚めさせる」ことをミッションとした「進歩派」の主張があまりにも前に出て、世の中がおかしくなっていくと感じつつも前述のように他人の目を気にして「支持」してきた人たちも、さるがにこれではおかしくなる一方だとトランプに一票を入れたのでしょう。 そうした人たちにとって唯一の選択基準はどちらが「コモンセンス」に近いかという点で、かならずしもトランプのすべてを肯定して一票を入れたのでしょう。(ハリスがあまりにもおかしすぎたと思ったはず) これまで航空宇宙や海軍関連、さらに安全保障などの話題を中心にお送りしてきましたが、ここに来てそれではカバーできない話題に注目するようになってきました。 そこで今回新しいブログチャンネルを追加することにしました。 タイトルをどうしようと考えて、コモンセンスなので「こもんせんす」にしようとしまいたが、尊敬する故江藤淳のエッセイ集こもんせんすとかぶるので「こもん・せんす」とします。  こもん・せんす でお送りしたいこと いわゆる「保守派』米メディアを中心に注目する記事をお伝えします。 それ以外に当ブログのオーナーとして気になる話題についてオピニオンをお伝えします。 当面は反DEIなどトランプ大統領のすすめる「改革」関連が多くなりそうですが、決してトランプ礼賛のブログにはならないでしょう。 ご期待ください。 なお、当ブログオーナーの運営するブログチャンネルは以下のとおりです。 航空宇宙ビジネスターミナル1 民間航空宇宙  https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ 航空宇宙ビジネスターミナル2 軍用航空安全保障  https://aviation-space-business.blogspot.com/ Aviation & Space News from Japan https://a...

済州航空のボーイング737-800が韓国の空港での墜落事故の第一報(Aviation Week)

  2024年12月29日、務安国際空港に墜落した済州航空737-800の残骸。 Credit: Chung Sung-jun/Getty Images 韓国の済州航空が運航していたボーイング737-800が12月29日務安空港でギアを格納したまま着陸を試みた後、コンクリート壁に衝突し、炎上破壊された。 7C 2216便は乗客175人と乗員6人を乗せ、バンコクから韓国南西部に位置する務安へ向かっていた。179人の乗客・乗員が死亡した。韓国国土交通省によると、乗員2名が救助されている。 韓国国土交通省は、フライトデータとコックピットのボイスレコーダーは回収されたとし、8人の航空事故調査官と9人の航空安全関係者で構成されるチームが現場にいると付け加えた。 この事故は、2024年における世界最悪の事故であり、12月25日にアゼルバイジャン航空のエンブラエル190型機がロシアの対空砲火を受け、カザフスタンのアクタウに墜落して以来、2度目の死亡事故となった。 済州航空機は当初、務安の滑走路01に進入中だった。同省によると、事故の6分ほど前、航空管制官が周辺に鳥がいるとの警告を発した。同省によると、その1分後(現地時間午前8時58分)、乗務員は最終アプローチ中に緊急事態を宣言し、迂回することを選択したという。また、フライトトラッキングサイトFlightradar24によると、航空機はその時点でADS-Bデータの送信を停止したという。 Flightradar24が公開したデータによると、同機は滑走路01への進入の最後の2分間、最大2,000フィート/分で一時上昇するまでの間、ほぼ700-800フィート/分の標準的な降下速度で飛行していた。 滑走路01へのショートファイナルで空港に進入する同機のビデオには、フラップとランディングギアを上げた737の姿が映っている。右エンジンは煙と炎を発していた。 同機はその後、滑走路19(現地時間午前9時3分に着陸を試みたのと反対方向の同じ滑走路)への着陸を許可された。 墜落のビデオには、着陸装置もフラップも展開されないまま滑走路を滑走する機体が映っている。長さ2,800メートルの滑走路の端をオーバーランした。航空機はその後、滑走路から数百フィート離れたコンクリートの境界壁に衝突し、炎上した。 エイビエーション・ウィーク・フリート・ディスカ...